学び人夏週間
午後11時。
今日は私が生徒の部屋の見回りに行く。
男子の部屋は2階、女子の部屋は3階だ。
1階の南先生の部屋から階段を上がっていると、2階と3階の踊り場に松野と男子生徒がいた。
「あ、先生来た……」
「うん、あたし戻るね」
こそこそ親密そうに話をしている。
なるほど、こいつが噂の飯島か。
まさに今、ここで愛を育んでいたらしい。
私は互いを名残惜しむ二人に声をかけた。
「もうちょっとだけ大丈夫だよ。先に中学生の部屋を見て回るから」
私の言葉を聞いて、二人は照れたような顔をした。
私はあまり見ないようにして、男子のフロアへ足を進める。
そして最も参加の少ない中学1年生の部屋から、名簿片手に点呼を取る。
「今から名前呼びまーす。呼ばれたら返事してー」
「うぃーっす」
一人ひとりの名前を呼び、声と顔でいるかどうかのチェックをしていく。
中1、中2、中3。
中3の部屋では重森がいつもみたいに無愛想に返事をした。
「はい、じゃあ中3おやすみー」
「おやすみーっす」
中3部屋のドアを閉めた時、ちょうど飯島が部屋に戻った。
高校1年生の部屋だ。
どうやら松野とは同い年らしい。
数秒後、ノックしてその部屋の扉を開ける。
飯島が他の生徒たちにからかわれていた。
「じゃあ名前呼びまーす。飯島ー」
「はい」
飯島はちょっと重森に似た風貌で、短髪で直毛の髪の毛が重力に逆らって揺れていた。