学び人夏週間
男子の点呼を終え、階段を上がって女子の部屋へ。
同じく中学生の部屋から点呼をとっていって、松野のいる高1部屋に行くと、松野は私の貸した本を読みながら無愛想に返事をした。
お、ちゃんと読んでる。
感心感心。
全ての部屋の点呼を取り終わって、高3のリストの最後に○を付けた。
合宿の参加者は、約50人。
小さな町塾の合宿の割には、結構な人数だ。
バリバリの進学塾というわけではない、このみなみ塾。
ここまで合宿の参加者……ひいては塾全体の生徒数がいるということは、やはり、塾に対する地域の信頼が厚いということだろう。
南先生の人柄など、勤めている進学塾にはないこの塾の魅力が、少しずつわかってきた。
残りの日程で、より深く探ってみよう。
点呼に使った参加者リストは、南先生の部屋へ返しに行かねばならない。
点呼担当が、生徒に異常がないことを伝えたところで、やっと講師陣も業務終了になる。
「点呼完了しました。生徒全員部屋にいます」
リストを南先生へ手渡す。
南先生は男子、女子、二枚のリストをくまなくチェックし、にっこり笑った。
「それでは今日は終了です。お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
私たち講師もそれぞれ寝る部屋に戻る。
女性講師は私と小谷先生の二人部屋。
男性講師は俊輔と理科講師である田中先生の二人部屋。
南先生は一人部屋だ。
「今日も疲れたー。授業がなくても結構体力使うよね」
大きなあくびをして、畳んだ布団を広げる小谷先生。
「はい。やらなきゃいけないこと、たくさんありますもんね」
私も自分の布団を敷き、寝転がった。
ここからしばらく携帯をいじったりしながらグダグダして、頃合いを見て消灯する。
明日も早い。
早く眠らなければ。
生徒たちは寝起きに顔を洗って歯磨きをする程度で準備が終わるが、我々大人の女性はそうもいかない。
髪型を整え、メイクを完了して、バッチリ講師としてキマっている状態で朝礼を迎えねばならないのだ。
“ヴー ヴー ヴー”
枕の横に置いておいた携帯が鳴った。
ディスプレイを見ると、俊輔からのメールだった。