学び人夏週間
<今日もお疲れ。ちょっと外で話さない?>
見た瞬間、私は思わず小谷先生に視線を移してしまった。
それに気付いて首をかしげる小谷先生。
「どうしたの?」
「あ、ちょっと外で電話してきます。先に寝ててください」
布団から出て、乱れた髪を整える。
ただ話そうと言ってくれただけなのに、いけないことをする時みたいにドキドキしている。
「うん、わかった。おやすみ」
笑顔で布団に包まる小谷先生。
私は「おやすみなさい」と言って部屋の明かりを消した。
靴を履いて部屋を出て、俊輔に返信。
<うん。今出る>
送信完了の表示が出たところで、足音を立てないように歩き出した。
女子フロアの3階から、静かに階段を下りる。
2階、男子フロアの階段入り口で、すでに俊輔が私を待っていた。
さっと手を上げ、小さな声で「よっ」と言う。
私も真似して「よっ」と返す。
静まり返った階段にふんわり響く。
そのまま二人で1階まで降り、ガラス扉の鍵を開け、外へ出た。
朝、ラジオ体操をする広場まで行くと、キレイな満月がやさしく周囲を照らしている。
広場を囲うように立っている4基の外灯と月明かりを頼りに、国旗を掲揚してある台へ。
ちょうどいい高さのところに腰を下ろす。
風が吹いて、草木がガサガサと音を立てて、少し不気味にも感じた。
見慣れない景色の中で、月だけが凛として美しい。
「俊輔。月がキレイだね」
「お、本当だな」
雲一つない夜空に堂々と浮かんでいる満月。
ふと俊輔の手が私の手を覆った。