学び人夏週間
「おはよう」
国語部屋に入ると、今日はちゃんと二人とも教室にいた。
「おはようございまーす」
「うぃーす」
相変わらずやる気のない声が返ってくるのに安心した。
今さら元気いっぱいに挨拶されたって気持ち悪い。
講師としては不謹慎かもしれないが、この二人にはこのやる気のなさが似合うと思う。
もちろん、ちゃんと学んでくれないと困るわけだが。
「あ、先生。この本ありがとうございました」
松野が立ち上がり、昨日私が貸した本を差し出した。
私はそっと受け取る。
「どうだった?」
「結構面白かったです。読むのも苦ではありませんでした」
「そう、よかった」
私が微笑むと、松野はニヤリと悪い顔をした。
「特にラストの……」
「わーーーー! ダメ! 言っちゃダメ。まだ最後まで読んでないから!」
聞きたくない。
自分で読んで確かめたい。
必死な私を笑った松野は、満足そうに席へと座った。
「ねえねえ、エロかった?」
長机に身を乗り出すようにして尋ねる重森に、松野がまたメスのようにサクッと言い放つ。
「さあね」
重森はムスッとしただけで、何も言い返さなかった。
やはり、松野には弱いらしい。