学び人夏週間

山小屋は想像していたよりも大きい建物で、小屋というよりログハウスのような感じだ。

外観はほとんど木でできており、屋根は何か別の素材で作られている。

小屋へ近付くほど中から生徒たちの話し声が聞こえてきて、窓に人影が見える。

人里から取り残されたように真っ暗な道は、何事もなかったけれどそれなりに不安を煽るものだったから、懐中電灯よりもはるかに明るい照明や人の気配を感じただけでもホッとした。

「着いたねぇ、重森」

「ああ。思ったより遠かった」

入り口のドアは、私が開けた。

気の香りが漂い、暖色の明かりに包まれる。

扉の先は玄関になっており、100足近く入りそうな靴箱も整備されている。

そして右には室内へ続く扉、さらに右奥にはトイレがある。

室内への開けると、先に到着していた生徒たちが一斉にこちらを向いた。

「あー、やっと来たー」

「おつかれー」

かけられる言葉に笑顔を返す。

広い部屋だが、それでも生徒全員と講師3人で50人近くいるわけだから、狭い。

南先生と田中先生は壁を背にして座っており、その前に小さな机が置かれている。

机には燭台があり、蝋燭は2本立てられている。

部屋へ入り、扉を閉め、重森が適当な場所を見つけて座ったところに私も腰を下ろした。

天井に電気照明はあるが、あえて蝋燭のみから明かりをとっているらしい。

ゆらゆらと照らされている南先生の顔が不気味に見える。

光をメガネが反射させている田中先生も、余計に表情がわからず静かな狂気のようなものを感じた。

「これで全員揃いましたね」

この雰囲気のせいか、生徒の私語も控えめだ。

南先生の声が聞こえると、しんと一気に静かになった。

「では、夏の暑い夜を涼しくするため、田中先生にちょっとだけ怖い話をしてもらいます」

ゴクッーー

所々から息を飲む音が聞こえた。

田中先生は顔をやや下に向けたまま、話を始めた――。



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