学び人夏週間
4日目
4日目、朝。
薄黒い曇り空の下、ラジオ体操は無事に行われた。
朝礼台に立つ田中先生が告げる。
「天気予報によると、台風が近づいているようです。今日は宿舎から出ないようにしてください」
今にも雨が降りそうだが、台風の影響によるらしい。
確かに、ちょっと風が強いし、雲の流れも速い。
「明日のバーベキューは延期、または中止になるかもしれません」
生徒から不満の声が上がるが、台風となればやむを得ない。
安全第一。
合宿も今日が折り返し日だ。
どうか無事に合宿を終えることができますように。
「おはよう」
朝食後、着替えを済ませて国語部屋へ入ると、ただでさえ無愛想な二人の表情が、妙にやさぐれていた。
「二人とも、どうしたの? 不機嫌だって顔に書いてある」
尋ねると、重森が眠そうな顔で言う。
「この本いつエロいシーン出てくるの? 昨日遅くまで読んでたけどたどり着かないんだけど」
読書に夢中で寝不足ってことか。
エロで釣って読ませているけれど、エロ本ではないのだから、そうすぐにはたどり着かない。
そもそも恋愛の切なさや素晴らしさを味わうための物語なのだ。
重森が期待する描写だって、必然的に盛り込まれた、ほんの少しのスパイスにすぎない。
中学生でも楽しめる内容だし、もっとストーリー自体を楽しんでほしいのだが。
「読んでりゃそのうち出てくるから」
ため息混じりにそう言うと、重森は「へーい」と愛想なく返して机に突っ伏した。
額が触れて軽くゴン、と音が鳴る。
松野は重森の行動に反応することもなく、ただ暗い顔をしていた。