赤の国と青の国
裏切り
それは、全く予期せぬ出来事でした。
少女がいつものように少年に宛てたメッセージのデータが、偶然あるウイルスの介入を受け、王宮の端末に流れてしまったのです。
父親は、烈火のごとく怒りました。
青の国の者が、赤の国の者と交信するなどという事は、決してあってはならない事。
国家への裏切りは、たとえそれが国王の娘だとしても、死刑も免れない重罪でした。
少女の父親は、娘の裏切りが誰かに知られる事を恐れ、少女を王宮の地下室に監禁し、少女から一切の自由を奪いました。
少女は突然の出来事に嘆き悲しみました。
もう、自分はあの少年と一生言葉を交わすことも出来ないだろう・・・。
暗い地下室の中で、少女は考え続けました。
人と交わる事が、なぜ罪なのか・・・。
赤の国の人も、青の国の人も、同じ人間なのに・・・。
なぜ、彼らに背を向けなくてはならないのか・・・。