【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙①〜
「そなたが、大臣の自慢の若君であるか」

目を見開いて見つめる一の君に、帝はその麗しきお声をおかけになります。

「では、そちらの姫が、そなたの姉姫であろう。ふむ、大人しげに、顔をかくしておいでなさる」

そうして、お笑いになる帝のお顔が、あまりにも美しく、優しげでいらっしゃったので、一の君も、これはたいそう高貴なあたりの方であるとお分かりになって、

「こちらは北の対にございますれば、我が母の居所、貴殿のご興味を引くようなものはなしと存じます」

このように、かしこまってお答えになりましたので、帝は、大層感心なさって、

「いかにいかに、そなたがおるではないか」

こう、おっしゃいました。
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