【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙①〜
さて、そのころ。

その左大臣の邸の庭では、噂の渦中の一の君が、弟君と、乳兄弟の香月姫とともに、鬼事(おにごっこ)の真っ最中でございます。

「あら、一の君、何をみていらっしゃるの? そのように余所見(よそみ)をなさっていては、転んでしまいますわ」

ちらちらとよそを気にしている一の君に、香月姫が頬を少しばかりふくらませて、言いました。

「だって、お姉様が、あちらで母上とお話しているのだもの」

一の君は答えて、そうおっしゃいます。
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