愛すべきもの
第一章  出会い

チャット




「ねぇねぇ、昨日さ、袖乃さん見た!?」
一人の女の子が後ろの席の女の子に聞く。

「え~っ。見てない!修司見た?」
その女の子はまた、隣の男の子へ聞く。

「俺見たよ。
 雷さんと話してた。」

「雷さん?あたし見たんだけどな~。
 あっ、袖乃さんって吹雪さん!?」

「そうそう。HN一緒じゃねぇか」


こんな会話が続くのも……


もう短かった。

毎日聞くこの会話。


あたしはその後ろでこの会話を聞いている


「ねぇ明日佳は吹雪さんか袖乃さん見た!?」

突然一番前の女の子、有紀が喋り掛けてきた。

「あ、うん。一緒に喋ったよ」


こんなのも嘘。

あたしの正体は今じゃチャットの住民はみんな知ってる……



鈴鹿 袖乃なんだから―…

「まじぃ!?いいなぁ~…
 つかさぁ、あたし明日佳をみたことないんだけどっ」

「あーうん。夜中にやってるからね」

サラッと返し、あたしはまた会話を聞く。

本を読んでるふりをしながら…


*   *   *

家に帰り着き、すぐにパソコンをつける。
制服から私服に着替え、パソコンの前に座り、チャットを開く。

名前: 鈴鹿 袖乃
H N: HN:柳 【スズカ シュウノ】……


入室ボタンを押すと、みんなから挨拶された。

一樹 有希: こんにちわぁ~
相沢 ナナ: きゃーっ、袖乃さんだっ!こんにちわ!
柚木 秀二: おいっす。

有希は有紀…
ナナは奈々子
秀二は修司…

あの三人がそろっていた。
あたしが来たことでかなり驚いているんだろう。

鈴鹿 袖乃: こんにちわ。みんな元気だね~。

あたしは一応返信すると、違うチャット場を開き、入室した。
そこには……雷ともう一人、別の人がいた。

その人が―……あたしの愛した人だった。
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