ハート
その日の帰りは、いつにも増して冷え込みの酷い夜だった。


「さ~む~い……」

外に出るなり、冷たい木枯らしが吹き付け、私の体温をどんどん奪い去っていく。


両手に息を吹き掛けて、必死に温めようとしたが どんなにやっても温もりは一瞬で逃げてしまった。


こうなったら…

意を決して 家まで走って帰ろうか、と思っていた矢先のことだった。


ププーッ



後方から車のクラクションの音がするので振り返ってみると 白いエスティマが停まっている。


私が立ち止まっていると窓が開き、なんと…

大野さんが顔を出した。



「どーも」


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