ハート
温かいベッドの中で 抱き合いながら 私たちは幸せな時間を過ごしていた。


けれども、そんな幸せな時間にも限りがあることを
このあと私は知ることになる…







「ねぇ、まーは私のこと好き…?」


「うん、だいぶ好き」

「私も、まーのこと大好きだよ」




当然、まーもこの言葉に満足してくれるだろうと思っていたのに…

返ってきたのは、意外な返事だった。



「ナナは、あんまり俺のこと好きにならないでいいよ」


思わず、体を起こして彼に向き合った。

「どうして、そんなこと言うの…?」


まーは、今にも泣き出しそうな私の頭を撫でながら 静かに謝った。

「ごめん…。俺、ナナとずっと一緒にはいられないんだ…。実は来年の春、海外転勤になるのがほぼ決まってる…」





突然の告白。

頭が真っ白になり、しばらくショックで言葉が出てこなかった。

言葉の代わりに、涙が溢れる…


「せっかく仲良くなれたのに…」


まーは私を強く抱きしめると、

「泣かせてごめん…」

と、何度も何度も謝った。


「ずっと一緒にいられないってわかっていながら、近づいたりしてごめん…。俺本当に卑怯だと思う。これ以上仲良くなっても、その分別れが辛くなるから…もしナナが辛いなら、今からでも離れるよ…」








しばしの沈黙の後、

私はやっと口を開いた。




「こんなに好きになっちゃったのに、そんな簡単に離れられる訳ないじゃん。」


そのまま、まーの胸に顔を埋めて泣いた…


まーが長い指で、そっと涙を拭ってくれた。





「限られた時間を、大切にしよう…」


言葉には出さなかったけれど、 私たちはお互いに胸の中で そっと…

そう誓い合った。






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