ハート
その日は久しぶりの快晴で、日がだんだん短くなっているにも関わらず、17時でもまだ明るい日差しが残っていた。


私が生まれた19年前のこの日も、今日のような心地の良い快晴の日だったそうだ。









私はその日もアルバイト先の、町外れにある整骨院へと向かっていた。






今年の春に大学生になって、早半年。

夏休みから生まれて初めてのバイトを始めた。



バイトをしてみようと思ったのは、お金が欲しいからとかいうのではなく、
ただ、社会というものを知っておきたいと思ったからだ。



華奢で人より体力のない私は、普通の女子大生がするような飲食店での接客業や工場などでの作業といった仕事には無理があったので、事務系の 比較的楽な体制でできる仕事を探していた。

そんな時、アルバイトの情報誌をめくっていて、ふと目にとまったのが今アルバイトをしている この整骨院だったという訳だ。


駅からはけっこう歩くものの、私の住んでいる最寄り駅なので通いやすいということもあり、私にとってはとても好都合なバイトだった。




私の仕事は、受付に座りカルテのチェックや診察代の計算をすること。

受付の手があいた時は、看護助手の手伝いもしている。



その日もいつものように、淡いピンクのナース服に着替えるとすぐ、仕事に取りかかった。




華の女子大生が誕生日の日にアルバイトなんて、なんだか惨めだけれど…
何も特別なことのない誕生日にはもう慣れっこだった。



家に帰ったらきっと、いつもの誕生日のように お母さんがケーキを買って待っていてくれるだろう。
そして、お父さんと弟と三人でいつものように祝ってくれる。


それだけで十分だ。















でも神様はその日、私にもう一つ大きなプレゼントをくれた。


私がそのことに気づくのは、もう少し先の話…
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