ハート
時間はあっという間に過ぎ、バイトの時間になった。

ナース服を着て鏡を覗くと、
寝不足と精神的な疲れで顔色は悪く まーがいつも可愛いと誉めてくれていた大きな二重瞼は腫れ上がり、目の下には隈もできていた。

なんて悲惨な顔だろう…

まるで普段の私とは別人の顔だった。




あまり患者さんに見られないようにと、俯き加減に受付に座りながら ひたすら早くバイトが終わるようにと願い続けるしかなかった。



その日、まーが診察にきたのは閉院ギリギリで 私が掃除をしている時だった。

スリッパを磨いている私を見つけると何も言わずにそっと近寄ってきて、強く 抱きしめられた。

何も言葉は交わさなかったけれど、まーの瞼も真っ赤に腫れていて 一晩なき明かした事がわかった。

そしてその瞳は今まで見たことがないくらい、優しさと悲しみに溢れていた…



「あとで話そう」



そう言い残して、まーは診察室へと入って行った。
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