ハート
バイトが終わり、着替えて外へ出ると 先に診察の終わったまーが、白いエスティマの中で待っていた。

私が扉を開けて中に入ると、まーはすぐに車を発車させた。

そのまましばらく沈黙が続き、 息苦しくなった私が沈黙を破った。

「どこに向かってるの…?」


まーはハンドルを握り、真っ直ぐに前を見つめたまま静かに答えた。

「俺ん家。少し、話そう」






家に着くと、まーはコタツの電源を入れ 私に入るように促した。

「寒くてごめん。すぐあったかくなるから」

そう言って、自分も向かい側に座った。


……………

……………

……………


また沈黙が続く…



しかし、今度沈黙を破ったのはまーだった。


「ナナ…、お前の病気ってそんなに悪いの?もう絶対助からないの?何か方法はないの?」

まーの顔は今まで見たことがないくらい真剣だった。


「まだそこまで症状は重くないけど、だいぶ悪い…。心臓移植すれば助かるかもしれないけど、無理なことだし、したいとも思わないし…」


「心臓移植すれば助かるの…?じゃあ、しよう!今すぐにでもしよう!」


なかなか「うん」と返事をしない私に、まーがしつこく問いかける。


「ナナ、返事して。移植手術受けようって!」






私の肩を掴むまーの手を思わず払いのけた。



「そんな簡単なことじゃないんだって」


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