ハート
「ごめん…」


思わず声を荒げてしまったことを謝りながら、涙が一筋こぼれ落ちた。




「ナナは謝らないで。俺こそ、なんも知らないくせに口突っ込んでごめん」

まーの手が優しく私の背中をさすってくれた。




「移植受けるのに、一体いくら位必要か知ってる?」

私の質問に、まーは考えこむ。



「わかんない。教えて?」





ティッシュで涙を拭いながら私が答える。

「一億くらいかな」



隣でまーが息を飲むのがわかった。


私はそのままつづけた。


「そんな大金、とてもじゃないけど出せるわけないもん」




しばしの沈黙の後、まーが口を開いた。
 

「なんとか…なるよ」



「なんとかって?」



「募金とかすれば、一億くらいきっと集まる。俺前に駅とかで移植の募金してるの見たことある。
だから、募金活動すれば…」


「やめて」


まーの言葉を途中で遮り、私は机に顔を伏せた。



「ごめん…」


まーの手が再び私の背中をさする。





「私ね、募金活動とかして皆の見せものみたいにされたり、他人から同情されたりするのとか… 絶対に嫌なんだよね。  もう、いいんだ。 生まれた時からわかってたことなんだから。   
だからもうこのまま何もしないでほっといてほしいの」


まーの背中をさする手が止まった。

その代わり、後ろから今までにないくらい強く強く…抱きしめられた。


「わかったよ、ナナ。 もう何も言わない…」



私が体ごと振り向くと、まーの瞳にも涙が溢れていた。




「でもナナ、一つだけ聞いて。 昨日一晩、俺が考えた末に出した答えがあるんだ…」








心臓の鼓動が、いつもより更に早くなりだした…

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