ハート
2月も半ば近くに差し掛かった頃。

その週はまーが夜勤で、私もたまたま体調がよくて家にいたため、平日でも遊んでいた。



バレンタイン前日。


その日は張り切って、生まれて初めて好きな人のためにチョコレートケーキを作ってみた。


今までもバレンタインに彼氏や好きな人がいたことはもちろんあったけど、面倒くさくて手作りをしたことはなかった。



まーにはいつもお世話になっているのもあるから、日頃の感謝も込めて、私なりに不器用ながら一生懸命作ったつもりだ。






当日、
まーにケーキを渡すと喜んで、美味しい美味しいと食べてくれた。
お世辞かもしれないけど、本当に嬉しかった。



その日はケーキを食べた後、いつも通り二人でゴロゴロしながらずっとくっついていた。


キスもいっぱいした。


もうまーとは数え切れないくらい何度もキスしたけれど、何回しても何回しても飽きないくらい 私はまーとのキスが好きだった。


それからベッドの上でずっとハグしてくれた。



まーの温もりが全身に伝わってきて、まーの心臓の鼓動が肌を通して伝わってきた。

私の体温や鼓動も、ちゃんとまーに伝わっていたかな…?





トクトクトク……


心臓の音がする。




生きている。



まーも私も今、生きている。





生きているって、なんて温かいんだろう…

なんて幸せなんだろう…





死んでしまったら、この温もりもこの鼓動も、何もかも感じられなくなってしまうんだね……




胸が熱くなって、涙がこみ上げそうになった。





生きているこの瞬間を、大切にしよう。




まーの温かい胸に顔を埋めながら、そっと涙を飲み込んだ。









この時の私はもう、まーの彼女の存在なんて ほとんど忘れかけていた。


昔に戻ったように、まーは私だけを見ているって 心のどこかで勘違いしていた……



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