ハート
普段と変わらない日曜日のはずだった。

私は早起きして電車に乗り、神奈川の彼の家へと向かった。

久しぶりに会えるのが嬉しく、自然と胸がワクワクする。

2時間ほどかけて彼の住む最寄り駅へ着き、まだ寝ているであろう彼のために朝食とお菓子を買って、彼の家へと急いだ。

マンションのインターホンを押すと、案の定 目覚めたばかりの眠そうな彼が出た。

「は~い、どなたぁ?」

まだ寝ぼけているのがわかる。
疲れているとはいえ、ちょっとムッとした。

今日朝から私が来ることは知ってるのだから、「どなた?」はないだろう。


「おはよ!ナナだよ~。きたよ~」

気づかれないよう、わざと明るく返した。

「あぁ、今開ける」

気のない返事が返ってきて私は更にムッとした。


けれど、せっかくの楽しい時間を壊したくはないので必死に堪える。

彼だって疲れているのだ。
仕方ない…仕方ない…




部屋に入ると、中は足の踏み場もないほど散らかっていた。

私が呆然と立ち尽くしていると、彼はササッと物を横に押し退け小さなスペースを作り私を促した。

「俺、シャワー浴びてくるからくつろいでて」


こんな所でくつろげるかよ…
と思いながらも、仕方なく小さなスペースに腰を下ろし 買ってきた缶ジュースに口をつけた。

バスルームからは彼がシャワーを浴びる音が聞こえる。


「あーぁ…」


思わず溜め息がこぼれる。

持っていた缶ジュースを一気に飲み干した。




その時、携帯の着メロが急に鳴り、びっくりして思わず吐き出しそうになった。

鳴ったのは彼の携帯だった。

枕元に置いてあるそれに、恐る恐る手を伸ばしてみる。


「ちょっとだけ、ちょっとだけ…」


いたずら心と興味本位で 彼の携帯を覗いてみた。


今きたメールを開いてみる。


「……うそ」


私の手が止まった。



それは、二度と連絡を取らないと約束したはずの しつこい元カノからのメールだった。

そして、彼が元カノとマメに連絡を取り合っていたことが メールの履歴から全てわかったのだ。


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