不思議の国とアリスのゲーム
チェシャ猫にそんなことがわかるかどうかアリスは不安だったが、チェシャ猫はすぐに言葉を返した。
「死にたいから―――」
「えっ・・・」
『死にたいから―――』
その言葉が、アリスにとって凄く嫌な記憶を呼び覚ました。
『何しているのっ!!』
『いいのっ!!
もう私には生きる意味がないのっ!!』
『やめてっ!!』
ザシュッ!!!
ポタッ ポタッ
『っ、―――』
『あ・・・お姉ちゃ・・・』
「アリス?」
ハッ!
「あ、チェシャ猫・・・何?」
「やっ、ぼけーっとしてたから」
「嘘・・・ゴメン」
「別にいいけど」
心配そうなチェシャ猫に、俯くアリスは気付かなかった。
「それより、早く帽子屋のところに行こうチェシャ?」
顔をあげたアリスはさっきまでとは違い、愛くるしい笑顔をチェシャ猫に向けた。
するとチェシャ猫は首を傾げた。
「チェシャ?」
「あ、ゴメン。シルヴァさんがそう呼んでるなら、私もそうよぼうかなって・・・チェシャ猫の名前わかんないし」
少し悲しげにチェシャ猫を見ながら話すアリス。
そんなアリスを見ていたチェシャ猫はふっと笑うとアリスに話しかけた。
「いいよ、チェシャで」
そう聞いたアリスはぱっと笑うとチェシャ猫を手招きしながら走って言った。
「チェシャ、早くいこっ!」
そんなアリスを見ながらチェシャ猫はボソッと呟いた。
「俺には・・・名前がないから」
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