tipe-DOLL【No.1007】
立ち止まり肩を落とす健の顔を美子は心配そうに覗きこんだ。

二人は生まれた時から隣同士の家に住む幼なじみだった。

「健?どうしたの?」

「いや、何でもないよ。…ただどんどん行ける場所が減っていくなぁと思って。」

悲しげな顔をする健を見て、美子は一瞬辛そうに顔をしかめたが、すぐに無理矢理眉をつり上げた。

「そんなこと言ってもしょうがないでしょ!ほら、ちゃっちゃと歩いて帰るわよ!あたし達が嘆いたって現状は何も変わらないんだから。あーもうっ。陰気な顔してないで笑いなさいよ!」

言い方はキツイが美子の言葉には健に対する思いやりがある。

長年の付き合いでそのことがわかっている健はにっこりと微笑んだ。



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