このキズで俺はお前を縛る
ふんっ

…たく、なんで俺が…

俺はどすどすと廊下を歩いて、居間のドアを変えた

雪乃がソファに座って、俺の母親と楽しそうに会話をしていた

「あら…さっちゃん、早いのね」

母親が俺に振りかえって口を開いた

「ああ、まあ
大学の授業が休講だったから」

雪乃が俺と目が合うと、にっこりと笑った

「ちょっと聞いてよぉ、さっちゃん
お兄ちゃんったら、雪乃さんが来てくれたのに、用事があるからって
部屋に戻っちゃうのよぉ」

「ああ? 忙しいんだろ」

俺は後頭部を掻くと、冷蔵庫に向かう

雪乃は兄貴の許婚だからなあ…


「ちょっと、雪ちゃんにご挨拶は?」

俺はガキかよ!

「あー、どうも」

「背を向けて言わないの」

「はいはい、ごゆっくりぃ」

俺はコーラのペットボトルを取ると、その場にごくごくと飲んだ

「さっちゃん、冷蔵庫は閉めてよ」

母親の不愉快な声が響く

「…もうっ、どうして男の子って…」

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