ピンキーリング
「シルバーがいいな。細くて、華奢な感じのがいい。」

パンにオリーブ油を少しつけながら彼女は言う。


一見、わがままに見える。

だけど彼女はこの2年で変わった。

昔はそれはもう、私を責め立てたものだ。

もっと一緒にいたい、もっと私が早く生まれていたら、どうしてわかってくれないの?

そんなことばかり言っていた彼女が、しれっとした顔で指輪をねだっている。

泣いて責め立てる事は、なくなった。
悲しい顔を見せなくなった。
じゃあまたね、と、笑顔で手を振るようになった。

決して彼女がこの恋に慣れたわけではないのだ。私は知っている。

証拠に、ここ数ヶ月で劇的に痩せてしまった。

本人は何も言わないけれど、見るからに病的に痩せ細ってしまった。

痛々しいくらいに。
< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop