鳥籠のドルチェ
すると何の変哲もない本棚の中で、一冊だけ光っているのに気がついた
─こんな本…、あったっけ……?
手にしてみると薄さとは違い重たい本だ
何より真っ黒な表紙に目が行ってしまう
そして表紙には複雑な魔法陣のようなものが描かれている
"俺は…この本の中に、閉じ込められている…"
諦めたような溜め息をつくような柔らかな声色でそう言う
(閉じ込められてる?
何か悪いことしちゃったの……?
………悪い人なの?)
マリンは必死に話しかけるも不安になってしまった
"さぁな、悪か善かは
お前が決めればいい…"
確かにそうだ。
けれど閉じ込められているのを助けたりしていいのだろうか
"ここから出してくれたら…、お前の願いを叶えてやる"
迷っているマリンに甘い囁き、まるで悪魔だ
(あたしの願い…?)
"この魔法陣を消すには、お前の血を一滴垂らせばいい……"
(どうしてあたしの血なの……?)
"さぁな、でもお前の血でないと無理だ"
(解ったわ……)
マリンは不安ながらにそう言うと、十字架のブローチの針で親指を刺して
本の表紙に血を垂らそうとした
†