私の敵は『俺様』です。
あぁ!!
黙ってしかいられない自分にイライラする!!
言いたくない、絶対に言いたくない!!
だけど…
「ほら、早く」
退学はごめんだ。
「…葵…先、輩…」
「よく出来ました」
その瞬間、温かいものが唇に当たってあたしは目を見開いた。
肌に当たる暖かい吐息。
目の前に見える長い睫毛。
キス…されて…る…?
そう気付いたと同時に、解放されてあたしは廊下にペタリ、と座り込んだ。
「じゃあまたな、夢」
それだけ言い残して、まるで何事もなかったかのように廊下を歩いて行く杞憂 葵。
ポカンと口を開けて後ろに立っていた理衣は、正気に戻ったのか、だんだん小さくなって行く杞憂 葵の後姿に叫んだ。
「あんた、私の夢にこんなことしてタダじゃおかないんだからーっ!!!」
その声に振り向きもしない彼に、理衣が小さく呟いた。
「アイツ…アイツいつか絶対殺ってやるっ!!」
まるで嵐が過ぎ去った後かのような状況に、
あたしは廊下にへたり込んで、真っ白な頭の中何も考えることはできなかった。
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