私の敵は『俺様』です。
舞台の中央に着いた杞憂 葵さんは、新入生がいる真正面を向いた。
その瞬間、女子たちの目がハートになったのがわかる。
それくらい、かっこいいからだ。
漆黒色のビー玉みたいな瞳と同じ色のサラサラな髪。
スーッと鼻筋の通った高い鼻。
透き通るような白い肌にバランスのとれた長い手足。
天使みたいに綺麗な彼は、きゅっと口元を吊り上げて唇を開いた。
『俺様の名前は、杞憂 葵』
俺……様…!?
その言葉を聞いたと同時にあたしはポカン、と口を開けた。
開いた口が塞がらないとはこのことだろうか。
そんなのお構いなしで杞憂 葵は見下すような笑みを浮かべながら続ける。
『今、頭に叩きつけろ。杞憂 葵様、と。
それから――…
校則第十四条〝杞憂 葵に逆らえば退学〟
生徒手帳に書いてあるから、暗記しろ』
なんか…凄いこと言ってるけど……
もうすでにあなたの事とその校則は皆頭に焼き付けた後だと思います。
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