私の敵は『俺様』です。


「あれ、理衣、今あたしがぶつかった人―――」


知らない?と続けようとしたけど、出来なかった。


それはもう、鬼のように恐ろしい顔で廊下の向こうを睨んでいたから。


あたしも慌てて、その方向を見る。


そして、その後ろ姿に見覚えがあることに気付いた。


あの長身と綺麗な黒髪は―――


「杞憂 葵ーーっ!!」


そう呼んでも、その人は歩き続ける。


「夢、〝様〟を忘れてるっ!!」


コソコソと急いで耳打ちしてきた理衣のおかげでハッとして、もう一度呼んでみた。


「き、杞憂 葵様ーーっ!!」


は、恥ずかしっ!!


杞憂 葵様って言うの、すっごい恥ずかしかったよ!?


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