君から僕が消えるまで
別れ道がくるまで僕等は黙ったまま歩いた。
耳に入る波の音だけを、何も言わず耳を潜めて聞いていた。
「じゃあ…。」
別れ道で健一は軽く彼女に手を振る。
彼女も曖昧な笑みを口元に浮かべて手を振っていた。
何も言わず
振り向かず
背を向け歩く、
「待って…!!」
健一は未来の叫びに近い声に驚き振り返る
振り向くと彼女の顔はすぐそこにあった。
彼女は健一の制服の裾をしっかり両手でつかんでいた
彼女の思いもよらぬ必死の色をした表情に戸惑いを感じる。
「な…何したんだよ?」
「あ…あの、あの…ねっ…」
疲れているのか彼女の息は荒く声もかすれていた。
「その…何か、1人でため込んでるものとかあったら…あんまり1人で考えこまない方が…っ良いよ。」
「え…?」
「何かあったら、未来に言ってねっ!!役には立てないかも…だけど相談くらいには乗るからねっ!!」
「す…鈴木?」
「…それだけっ!!じゃあ、また明日~絶対学校来てねっ!!未来待ってるからねっ!!」
それだけ言い残すと、彼女は大きく手を振って走って行った。
ー彼女は笑っていた。