宙(そら)にとけて、しまう
「そんな顔、するなって。
多分もう生きてねえよ。
わかんないけど」
「じゃあ、どういう意味」
「あのさ、話すと長くなるかもしれないけど」
「いいよ、話してよ」
「姉ちゃんが、ただ海で溺れただけじゃなくて、
自分でどこかに行ったって、
5歳のガキのおれがホントに思ってたか、
わからないのよ」
「ん?」
「でもな、もしかしたらそう思ってたんじゃないか、
あ、これ絶対そうだよって、
昨日くらいに気づいたわけ」

すごく意外な展開だったのだけれど、
話に引き込まれて返事もしないで続きを待っていた。

その時わたしは気づいたんだ。
ヒデミと話すのが、何となく、生ぬるく楽しい理由に。
会話はキャッチボールとかって言い方、聞いたことあるけど、ヒデミとの会話は、言葉を投げて、それが投げ返されてくる感じじゃない。
でも、人の話全然聞かずに自分のことばっかり喋るようなやつでもない。
ヒデミといると、お互い話した言葉が、同じ壁の中にすうっと吸い込まれて行くような、そういう気がするんだ。


< 13 / 21 >

この作品をシェア

pagetop