宙(そら)にとけて、しまう
わたしは焦っていた
ヒデミに、これ以上何も言って欲しくない
そういう気持だった。
ヒデミが辛そうだったから?
そうかもしれない。
普通の顔をして、
今までしたこともない話をするヒデミは、
目に見えない境界を
越えてしまったようにも見えた。
これ以上突拍子もないことを言い出したら、
ついて行けなかったから?
それもある。
お姉ちゃんが地底に行ってしまったなんて
「うん、わたしも信じるよ」
そんな言葉で片付けられないし、
だからといって、
冗談にして終わらせてしまうのも嫌だった。
でも、もっと全然違うものが、
わたしを突き動かしていた気がする。
ヒデミの話を最後まで聞き終わる前に、
「こういう話だった」って
自分に説明をつける前に、
わたしも話したくなった
多分そんなことなんじゃないかと思う。
「ねえ、海の香りってわかる?」
突然わたしは大声を出した。
「海の匂いとか、磯の匂いってこと?
そりゃ、このへんでずっと育ったんだし……」
「わたしの名前、ヒロカって、
漢字で書くと海の香りって意味なんだよ。
洋香。ヨウカって書いてヒロカ」
ヒデミは、話をさえぎられても、
驚いてもいなければ怒っても、戸惑ってもいないみたいだった。
「それくらいわかるよ。太平洋の洋だろ」
「博識だね、意外と」
「受験生だし」
「じゃあ、風の香りは?」
ヒデミに、これ以上何も言って欲しくない
そういう気持だった。
ヒデミが辛そうだったから?
そうかもしれない。
普通の顔をして、
今までしたこともない話をするヒデミは、
目に見えない境界を
越えてしまったようにも見えた。
これ以上突拍子もないことを言い出したら、
ついて行けなかったから?
それもある。
お姉ちゃんが地底に行ってしまったなんて
「うん、わたしも信じるよ」
そんな言葉で片付けられないし、
だからといって、
冗談にして終わらせてしまうのも嫌だった。
でも、もっと全然違うものが、
わたしを突き動かしていた気がする。
ヒデミの話を最後まで聞き終わる前に、
「こういう話だった」って
自分に説明をつける前に、
わたしも話したくなった
多分そんなことなんじゃないかと思う。
「ねえ、海の香りってわかる?」
突然わたしは大声を出した。
「海の匂いとか、磯の匂いってこと?
そりゃ、このへんでずっと育ったんだし……」
「わたしの名前、ヒロカって、
漢字で書くと海の香りって意味なんだよ。
洋香。ヨウカって書いてヒロカ」
ヒデミは、話をさえぎられても、
驚いてもいなければ怒っても、戸惑ってもいないみたいだった。
「それくらいわかるよ。太平洋の洋だろ」
「博識だね、意外と」
「受験生だし」
「じゃあ、風の香りは?」