宙(そら)にとけて、しまう
急にヒデミの話になってわたしはびっくりしたけれど、考えてみれば「急に」でもない。わたしが気分が悪くなって倒れるなんてちょっとした事件だし、そんな事件にヒデミは立ち会った人なのだから。
それにしても、マナミが「ヒデミちゃん」と呼ぶと、人のことは言えないけれど、ただでさえ幼い感じのヒデミが、小学生くらいの小さな男の子みたいに見えて、違和感があるというか、わたしより見た目が大人っぽいマナミに対して、かすかに苛立ったりすることもある。

「前から思ってたけどさ、なんでヒデミちゃんて呼ぶの」
「だって一応年上だし、呼び捨てじゃ失礼じゃん。でもヒデミさんとかヒデミ君って顔してないし」
「顔って」
「いいじゃん。ヒデミちゃんがぴったりだよ。いいやつだし」
「マナミ、ヒデミのこと好きなの?」

完全にヒデミをからかっているようなマナミが、どういうを反応するだろうと、面白がってそう言ってみたのだけれっど、意外にもマナミは黙り込んだ。それとも寝てしまったのかと思った頃に、寝返りの音が聞こえた。

「そういうんじゃないと思うんだけどさ」
「けど?」
「今よく考えたら、ヒデミちゃんてけっこういいよね」
「ほんとに?」
「みんながいいって言うような子より、あたしはああいう子、好きかなー、なんて」

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