宙(そら)にとけて、しまう
でも、誰もいない。

階段を昇ってみる。
ゆっくりと、一段ずつ。
そしてすぐ降りる。
何も起こらない。
あの時とは何もかも違う。

風で枝がかすかに擦れた音をたて、
また、
誰かがそこにいる気がする。

でもわたしは
それが気のせいだと知っている。

もう何も起こりはしない。
あの時のようには。
そしてあの時もきっと、
何も起こらなかったのだと思う。
ただわたしはここで、
夢のようなものを見た。

ここであの子に出会った。
わたしの双子の姉妹のようなだれか。
思い出せないけれど
忘れることもできない
そんな人に出会って、
あの時、
わたしは子供時代を手放した。
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