宙(そら)にとけて、しまう
「おーい 起きてるの」

不意に、二段ベッドの下から、マナミの声が聞こえる。
妹のマナミは少しの物音でもすぐ起きてしまうたちらしい。
かといってうるさいと言って怒るわけではないのだけれど、一度起きると、いつも構って欲しがる。

「ヒロカ」
「うーん」
「起きてるくせに」
「起きてないよ」
「嘘つきねーちゃん」
「起きてないもん」

マナミの声が笑っている。
マナミはとても明るく、人なつこくて、要領のいい子。
生意気でちょっと大人びて見えるけれど、邪気がなくて憎めない子。
わたしとは全然違う。

「ヒロカってばー」
「何さ」
「ねえねえ、この間さあ、クラスの男子に、ヒロカの方が妹みたいって言われたよ」
「若く見えるからねー、わたし」
「子供っぽいんだよ」
「うるさい」
「15歳ってどんな?さすがにちょっと大人になった」
「そんな、急に変わるわけないし」
「女は急に大人になるって言うじゃん」
「あー、なんか意味わかってないでしょ」
「意味ってどういう意味、ねえねえ」
「にやにやしてる」
「してないよ、教えてお姉ちゃん」
「コドモのくせになー」
「いっこしか違わないのに」
「コドモ」
「あははは」
「あはははは」

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