Reverse side World
亮平の目の前のドアが開けられ、黒い服を身に纏った銀髪の少女が入ってきた。

「何を言っているのか分からないわ。私はいつもあなたの側にいるじゃない」
「『あっち』ではな」
「うふふ、そうだったわね。こっちは表なのね」
「……目的はなんだ?」

声をできるだけ低くしてそう告げる。

「あなたは光の巫女というのは知っているかしら?」

それならさっき、と言いかけて口を閉ざす。

「いや、知らない」
「そう……あなたに頼みたいことがあるの。光の巫女が直にここに来るわ。その子を保護して欲しいの」
「なんで? あんたがこっちの世界に来れるんだったらあんたが保護しろよ」

銀髪の少女ははぁと呆れたようにため息をひとつつき、改めて亮平の目を見て話し始める。

「私には無理なことなの。今ここにいることは奇跡に程近いの。分かってもらえる?」
「分かった。それであんたはどうして俺に光の巫女とやらを保護しろと?」
「それは裏での秘密。どうしても知りたければ裏の世界に来なさい」
「それだけは勘弁して欲しいんだがな……それはいいとして、報酬は?」
「報酬? あぁ、あの子に会えればいい?」
「引き受けた」
「相変わらず一途なのね、あなたは」
「これで話は済んだだろう? 帰ってくれ」
「ふふふ、約束よ。絶対に守り抜いてね?」

そう言って少女はその場からフッと消えてしまった。
そのあとには赤い血塗られたような薔薇が一輪落ちていた。
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