Reverse side World
それを拾おうとして触ったら消えてしまった。
とりあえず押し入れに無理矢理閉じ込めてしまったイヴを呼んでみる。

「おい、イヴ」
「亮平の……亮平の……馬鹿ぁああああああああああああ!」

そんな叫び声というか泣き声が聞こえてきたので慌てて押し入れの扉を開く。

「うわっ……」

そこには涙やら鼻水やら汗やら体中から汁が噴き出すだけ噴き出したイヴの姿があった。
亮平は頭を撫でることしか出来なかった。
しばらくすると泣きやみ始めたイヴがぽつりぽつりと思いを漏らし始める。

「うぅ……亮平……暗いところが怖いです……」
「そうか、すまなかった」
「…………」
「イヴ?」
「亮平……亮平は暗いところは好きですか?」

見上げるイヴの目には未だうっすら涙が溜まっていた。亮平はその涙を指で拭いてやり、優しく語りかける。

「好きでも、嫌いでもないよ」
「明るいところは?」
「どちらでもないな。好きだと言えば好き、嫌いと言えば嫌い」
「じゃあ、イヴは?」
「…………」

一番聞かれたくない質問だった。
銀髪の少女が言う『光の巫女』とはイヴのことであることは確かだ。保護する身としてはどう答えることが最適かは分かっている。
だが、もしもだ。
別れのときが来たら。
そのとき、イヴは亮平から離れられるのだろうか?
その答えのせいで離れるのを嫌がったらどうすればいいのか?

「答えられないですよね……だって僕は……僕はっ!」

亮平が考え終わるよりも先にイヴは悲しみを含んだ嗚咽を漏らし始める。
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