Reverse side World
「僕はっ! 僕は……」
「イヴ、俺の話、聞いてくれるか?」
「亮平……」
「俺にはな、愛している人がいた。相思相愛っていうのかな? 互いに本当に愛し合っていた。だけど、中学生だったからそんな色々なことはしてなかった。もちろん、キスなんて論外だった。一緒に学校に手を繋いで行くぐらいしかしていなかった。……他の奴ら、俺たちの交際に対して妬みとか感じている奴らもいたんだ。中学生だろう? 人の痛みなんか知らない奴らが多いんだ。そんな奴らに変な噂を流されたり、いじめられ始めた」
「そんなのっ」
「あぁ、馬鹿なんだよ、中学生って奴は。そんなことどうも思っていないんだ。俺たちはそれが本当に嫌だった。もちろん味方になってくれる人もいたさ。だがな……俺はそれを裏切って学校から逃げ出した。つまり不登校になったわけだ」
「亮平?」

亮平の目からはガラス玉のように大粒の涙が溢れ出していた。

「本当に馬鹿だったのは俺だったんだよ……俺はあの事件以来自分自身を恨み続けた。そんなことしても……帰ってくるはずもないのにな……」
「その恋人さんは、今はもう……」
「イヴの思っている通りさ……俺の愛していた人はもうこの世にはいない。俺が不登校になった次の日、学校の屋上から飛び降りて死んでしまったよ……ははは、馬鹿は俺だったんだよな……」

パチン、と乾いた音が無音になっていた部屋に響いた。イヴの小さな手が亮平の頬に張り手を繰り出したのである。

「そうやって、自分は馬鹿だとか卑下して何が楽しいんですか!? 亮平はその事件で何か変わりましたか!? 変われないままのくせに……変われないままのくせに、どうして変わろうとしないのですか! 亮平のことを思いながら飛び降りた、その人のことを思ったら変わらなきゃいけないと思うはずです! それを、何でっ!」
「……お前に何が分かるんだよ。俺だって変わらなきゃいけないと思ったさ……だけど、変わるのは難しすぎた……」
「もういいです!」

イヴはそう怒鳴って部屋を出て行ってしまった。そのあとには世の喧騒から切り離されたように静寂と深い闇が広がるもの悲しいだけの部屋が残るのみだった。
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