トランプ王国物語
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「つまらない」
教室のざわついた様子を見ながら洋ちゃん(本名、園路洋子)がボソッとつぶやいた。
「洋ちゃん、そんな悟ったような目を高一でしちゃだめだよー」
私はあははと乾いた笑いをしながら洋ちゃんに言った。
けれど洋ちゃんは尚も死んだ魚のような目をして教室をぼーっと見ている。
「なんか楽しいことは起こんないの?最近の楽しみって水戸黄門の再放送見るぐらいなんだけど」
あはは…洋ちゃんらしい……
「洋子、それならさ、ある日突然、別のどっかの世界に行っちゃったりする方がいいの?」
私の隣でさっちゃんがニコッと笑った。
さらさらのショートの髪が揺れる。
「え〜それもめんどくさい」
「洋子らしいね〜」
さっちゃんはニコニコしながら言った。