トランプ王国物語

◇◆◇





「つまらない」


教室のざわついた様子を見ながら洋ちゃん(本名、園路洋子)がボソッとつぶやいた。


「洋ちゃん、そんな悟ったような目を高一でしちゃだめだよー」


私はあははと乾いた笑いをしながら洋ちゃんに言った。


けれど洋ちゃんは尚も死んだ魚のような目をして教室をぼーっと見ている。


「なんか楽しいことは起こんないの?最近の楽しみって水戸黄門の再放送見るぐらいなんだけど」


あはは…洋ちゃんらしい……


「洋子、それならさ、ある日突然、別のどっかの世界に行っちゃったりする方がいいの?」


私の隣でさっちゃんがニコッと笑った。


さらさらのショートの髪が揺れる。


「え〜それもめんどくさい」


「洋子らしいね〜」


さっちゃんはニコニコしながら言った。
< 7 / 15 >

この作品をシェア

pagetop