隣の星の新くん




ぼかぼかと鞄は幾度と宙を舞う



真緒は止まることなく暴れ続けて、急にぴたりと止まった



「真緒…?」



恐る恐る顔を上げると、目から大粒の涙をぼろぼろ零しながら、真緒はわんわん泣いていた



そこでやっと自分の仕出かしたことを実感した



同時に幼稚で自分勝手な行動を恥じた



真緒の涙を掬いながら、落ち着くのを待つ



少しして、目を腫らしながら真緒は上目がちに俺を見上げた



「すっきりしたみたい…。アラタ、アラタはちゃんと幸せ?」



その言葉を聞いた瞬間、俺の口から勝手に言葉が零れた



「幸せだよ。今、彼女と住んでるんだ。連絡せずにごめん」



勝手に嘘が零れる



自分への戒めと、真緒に笑ってほしいがための嘘



真緒の目はこれでもかって程見開かれていて、少し苦しそうにも見えた



嘘だとバレたのか?



それから無理したような貼り付けの笑顔を俺に向ける



「幸せならいいの。彼女さんの話聞かせて?」



その笑顔は何?



仕方なしに俺の嘘に付き合ってくれてる顔?



優しさなのか?



聞くに聞けなくなって、俺はただ架空の彼女の話をする



付き合ったこともないのに、みんなどうやって出会ったとか知識も乏しいのに



ない頭を捻りに捻って絞り出す



俺のたどたどしい作り話を、真緒は真剣に聞いてくれて、途中で止めることもできなかった











.
< 25 / 88 >

この作品をシェア

pagetop