隣の星の新くん
ぼかぼかと鞄は幾度と宙を舞う
真緒は止まることなく暴れ続けて、急にぴたりと止まった
「真緒…?」
恐る恐る顔を上げると、目から大粒の涙をぼろぼろ零しながら、真緒はわんわん泣いていた
そこでやっと自分の仕出かしたことを実感した
同時に幼稚で自分勝手な行動を恥じた
真緒の涙を掬いながら、落ち着くのを待つ
少しして、目を腫らしながら真緒は上目がちに俺を見上げた
「すっきりしたみたい…。アラタ、アラタはちゃんと幸せ?」
その言葉を聞いた瞬間、俺の口から勝手に言葉が零れた
「幸せだよ。今、彼女と住んでるんだ。連絡せずにごめん」
勝手に嘘が零れる
自分への戒めと、真緒に笑ってほしいがための嘘
真緒の目はこれでもかって程見開かれていて、少し苦しそうにも見えた
嘘だとバレたのか?
それから無理したような貼り付けの笑顔を俺に向ける
「幸せならいいの。彼女さんの話聞かせて?」
その笑顔は何?
仕方なしに俺の嘘に付き合ってくれてる顔?
優しさなのか?
聞くに聞けなくなって、俺はただ架空の彼女の話をする
付き合ったこともないのに、みんなどうやって出会ったとか知識も乏しいのに
ない頭を捻りに捻って絞り出す
俺のたどたどしい作り話を、真緒は真剣に聞いてくれて、途中で止めることもできなかった
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