隣の星の新くん




『早く行かないと、真緒ちゃんまた泣くぞ』



言いたいことを言うと、タクさんは電話を一方的に切った



耳にはツーツーと虚しい音が響く



何が起こっているか分からない



だけど、これ以上真緒を泣かせたくない



電話を無造作にポケットに放り込むと、また俺は走り始めた



向かうのは颯のバイト先



レンタルビデオ店



暗く、陽が沈んだ闇の中、ただひたすら走った



ここから店まで、走れば40分くらいで着くはず



軋む体に鞭打ち、がむしゃらに走った



おばさん、ごめん



親のいない俺を引き取って、我が子のように育ててくれたのに



何にもなくなった俺に、宝物をたくさんくれたのに



真緒を泣かせて、怒らせてばっかりで



勝手に居なくなったりしたりして



こんな我が儘で身勝手な俺だけど、やっぱり釣り合わないってわかってるけど



それでも真緒が大事なんだ



本当は宝物みたいに、傷つけずに守りたかったけど



真緒は何でも真っ直ぐ受け止めちゃうから守るのは難しくて



逃げ出した



今更って怒られるかもしれないけど、真緒に言いたい



一言、好きだって



真っ直ぐで、無邪気で、太陽みたいな女の子



出会ってからずっと、宝物だった



どうにかなりたい訳じゃない



ただ、言いたいんだ



全てを放り出した自分を救うために



真っ直ぐな真緒に、真っ直ぐでありたいんだ








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