CRIMSON*SNOW
*1・不思議ナ旅人
一人娘
空を見上げると、一面に雪雲が広がっている。
時刻は昼を少し過ぎた頃。
普段なら1日の中でいちばん暖かい時間帯のはずだが、陽が出ていないので、冬用の厚手のコートをはおっても寒さを感じる。
いつもは賑やかなここの街通りも、寒さのためか、人通りがまばらである。
そんな中、通りに面した小さな宿[スノーマン]の一人娘・メアは、白い息を吐きながら、玄関から通りの様子を窺っていた。
かじかむ指先に息をはぁっと吐きかけ、ポツリと呟く。
「こんなに寒いんじゃ、お客さん来る訳ないか……」
そして、フゥッとため息をつきながら宿の中へ入ると、客のいない食堂を抜けてキッチンに向かった。
「あら、おかえりー。街の様子はどうだった?」
昼食の片付けをしていた母・ノアが、にっこり笑いながらそう尋ねた。
メアは首を振り、口を尖らせながら報告をする。
「ぜーんぜん!通りに人がほとんどいないの。お向かいのアニーおばさんまでいなかった。外、スッゴい寒いしっ」
「あらあら。それはご苦労様でした!」
ノアがケラケラと笑う。