散文
そのいち

あの子とあの子

学級委員を決めるとき。小学校3年生だったかな?


立候補したの、クラスで嫌われもののあの子。

だらしなくて、頭が悪くて病的な嘘つきで、……太ってたし、お世辞にもかわいくなくて。


そしたら、正義感の強いあの子も立候補したんだ。

頭がよくてスポーツ万能の。東京からの転入生で、美人じゃないけど愛嬌がある人気者。お金持ちのお嬢さんだけど、全然それを感じさせない気さくな子。

嫌われものと人気者の一騎討ち。

普通なら選挙になるけど、結果は目に見えてる。

だから、先生のとった方法は、クラス全員の目を閉じさせて、『○○さんがいい人は挙手をして。』


終わってから先生云った、『自分の目で見たから結果はわかるよね?』
敗者は自分の席に戻った。

勿論人気者のあの子が勝者。クラス委員としての抱負を述べる。


この子が立候補した理由はわかるんだ。うそつきでだらしないあの子には任せられないから。うん、わかりやすい正義感。
実際彼女があとから立候補してくれて助かった、ってクラスみんなが思ったよ。


ただ、今になって思うんだ。



嫌われもののあの子は、なんで立候補したのかな。


選ばれなかったとき、どんな気持ちだったのかな。



今は、確認の術すらないけど。
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