ロザリオとアイアンメイデン

 彼はその成果を見るためなら、たとえ私が自国の人間を殺してもなんとも思わないのかもしれない。

『狂っている』

 そんな言葉が頭をよぎったが、私も人のことは言えない。

 私は今から殺しにいくのだ。自らの意思で、自らの復讐のためだけに……









「止まれ」

 村の入り口近くにきたところで、私は一緒に来た兵士の足を止めさせた。



 ――戦闘モード発動



 頭の中の回路を切り替える。

 人工脳の発動で、これもまた戦闘用に改造された私の目の視野が一気に広がる。

 熱センサーと遠視能力を備えた新しい目は、物陰に潜む敵も見逃すことはない。

 入り口から一番近い、古びた廃屋らしき小屋のなかで動く人の気配を感知した。

「二人、三人……四人……」

 人数を数える私の声に、後ろに続く兵士たちが各々銃を構えた。

 小屋の向こう側に見える民家にも人の気配は感じるが、今のところ動く気配はない……


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