ロザリオとアイアンメイデン

 その小さな左足は、弾が当たったのだろう……出血で赤く染まっていたが、他に大きな外傷は見られない。

 その身を呈して庇った母親のおかげで軽傷で済んだのだ。

 すぐに手当てをすればこの子は助かる……絶望の中に、僅かに灯りがともった気がした。
 
「……ごめん……ごめんね。すぐに……助けるから」

 私は母親の体をどかし子供を引っ張り出すと、母親の身体を残りの二人の兄弟の遺体と並べて寝かせ、唯一生き残った幼子を抱きかかえて走り出した。








 この子を助ける。
 
 絶対に。絶対に――
















     +++++

 村を出て、ずっと走り続けた。

 泣き疲れて腕の中で眠ってしまった子供を抱いてひたすら走る。

 疲れ知らずの頑強な体が今は有りがたい。


< 34 / 48 >

この作品をシェア

pagetop