風の吹く町
可憐の部屋まで案内され、
七海がノックした。

「可憐、入るよー?」

ドアを開けると、ベッドに
横たわる女の子がこっちを向いた。

「可憐、具合どう?」

「んー…朝よりはだいぶ楽よ。
熱も下がって来たし…
けほっ、けほっ!!
まだ咳が取れないけど。」

「そっか。
あ、これ今日のプリントね。
体調良くなったらやりなよ。」

「ありがとう。」

「それと、今日あたしのクラスに
転校生来たから、
可憐にも紹介しておこうと思って
連れてきたんだ。」

「そうなんだ。
どおりで見慣れない顔だな
って思ってたの。」

「倉田尚翔くんよ。」

「よろしく。」

「よろしく…。
私、萩原可憐です。」

「それは聞いてる。」

「そうなの?」

「うん、あたしが洋祐紹介する時
ついでに名前だけ教えてたんだ。」

「そうなんだ。」

「可憐が良くなったら、
皆でお喋りしようよ。」

「うん、そうだね。」

「良い?尚翔くん。」

「いいよ。」

「じゃ、決まり~。」

他二名の意見はあえて
聞かないらしい。

洋祐はここに来てから
一言も喋らないし、
渉に至ってはいつものように
ヘッドホンをして
参考書とにらめっこだ。

尚翔には渉が何故
学級委員になれたのか、
不思議でたまらなかった。
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