風の吹く町
注文を済ませ、
七海と向かい合って座る。

七海は水を一口飲んだ。

「…七海、お前
さっきの事気にしてるだろ?」

「えっ?」

「見てれば解るよ。
俺とあの話した後から、
ずっと元気無いだろ?」

「…バレた?」

「あのな。」

「そっか…
尚翔くんにはお見通しかぁ。」

「…気にするなって言っただろ?」

「だって、あたしが訊かなきゃ
尚翔くんにあんな悲しそうな
顔させずに済んだのかな
って思ったらさ…。」

「お前なぁ、そんな事
気にしなくたって良いんだよ。
確かに失ったものはたくさんある。
だけど、ここに来て得たものは
それ以上にあるよ。
怪我しなきゃここには
来れなかったし、
七海や可憐、洋祐達に
だって会えてない。
だから、七海が気にする事なんて
一ミリもない。」

「…そっか。そうだよね。
考えすぎか。」

「おう。」

その時、頼んでいたものが来たので、
七海と一緒に食べてから帰った。
< 25 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop