風の吹く町
「…気づかない?
尚翔くんの事だよ。」

尚翔は驚いた。

自分の想いは
一方通行だと思っていた。

「俺?」

「うん。
尚翔くんになら、
キスされても…いいよ。
全然ショックじゃないもの。」

尚翔は可憐を
まっすぐ見つめ、静かに言った。

「…可憐。
それは俺に洋祐の痕跡を
消せって言ってるのと一緒だぞ。
俺はお前が好きだから
構わないけど、
可憐はそれでいいのか?」

「消してほしいよ!
こんな嫌な記憶、
好きな人に消してもらえるなら、
どんなに嬉しいか!
…お願い、消して…。」

涙ぐみながら、可憐が叫ぶ。

その姿を見ているのが辛くて、
尚翔は思わず可憐を強く抱き締めた。
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