エージェント・レイ‐狂人の島‐
問題は、この人の少なさだ。

人口10万程度の小さな島だけど、港に出入りする人間は引っ切り無しにいた筈だ。

それこそ深夜でもない限り、人間の姿を見かけないという事なんて一度もなかった。

今回のような事は初めてだった。

誰もいない港。

出迎えのない、島の玄関口…。

「何かあったのかしらねぇ…いつも港は賑わっているのに」

どこか緊張感のない口調でおば様が言った。

…そう、彼女の方が正しいのかもしれない。

考えすぎなのかもしれない。

ただ、港に作業員がいないだけ。

何しろこの霧だ。

仕事にならないから、休憩でもしているのかもしれない。

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