エージェント・レイ‐狂人の島‐
そう考えると、少し不安が消えたような気がした。

着替えの入った鞄を片手に、私は港をおば様と共に歩く。

「本当に酷い霧ねぇ」

おば様が言う。

濃霧は島全体を包み込んでいるかのようだった。

ほんの1メートル先が視認できない。

まるで島に深く分け入る事を拒むかのように。

或いは、ここで引き返せと警告するかのように。

…何故だろう。

今思えば本能的な直感だったのか。

私はそんな風に感じたのを覚えている。

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