エージェント・レイ‐狂人の島‐
風が吹いたのか。

あれだけ濃かった霧が、僅かに晴れてくる。

同時に周囲の様子も視認できるようになって来た。

…その光景に絶句する。

路上に放置された遺体。

そこかしこにこびりついた血痕。

電柱や建物の壁に激突した乗用車。

従う者がいなくなったにもかかわらず点滅する信号。

その信号が赤なのも無視して、車道をノロノロと歩く人影があった。

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