エージェント・レイ‐狂人の島‐
緊張の糸を緩めないまま、ゆっくりと建物の奥へ。

「あ、あの…すみませんっ…」

勇気を出して、声をかけてみる。

「すみませんっ、誰か…誰かいませんかっ」

もう一度。

返事は返ってこない。

私の声だけが、意外に反響する建物の中に飲み込まれた。

…無人の警察署。

もう誰も生き残っていないのか。

或いは、生存者達は全て別の場所へと逃げたのかもしれない。

もう一人…私という生存者がいる事にも気づかず。

「……」

額に手を当て、ガクリとしゃがみ込む。

絶望的だ。

私一人だけでは、こんな島から脱出なんて出来ない…。

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