エージェント・レイ‐狂人の島‐
腰を抜かして、床に尻餅をつく。

靴音をさせて近づいてくる警察官の顔を見上げる。

…彼は、覚えのある目をしていた。

白濁し、虚ろに漂わせる視線。

市街地でウンザリするほど向けられた、あの『静かなる殺意』を湛えた眼。

彼もまた、恐らくは井戸水を口にして暴徒化した一人だったのだ。

声すら上げない。

表情すら変えない。

何の感情も感じさせないまま、警察官はもう一度警棒を振り下ろす!

「きゃあぁあぁぁっ!」

膝が震えて立ち上がれない。

床を転がるようにして、私は警棒から逃れる。

カツン!と硬質な音がして、使い古された警察署の床…そのタイルの破片が飛び散った。

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